濁手(にごしで)とは、柿右衛門様式の磁器に見られる乳白色の素地を指す。濁手の乳白色の素地は「乳白手」(にゅうはくで)とも呼ばれ、従来の磁器が青味がかった白に対し、濁手の素地はほぼ純白であることが特徴。
柿右衛門様式とは、17世紀半ば頃、ヨーロッパに輸出された有田の色絵磁器の一群のこと。『濁手素地』と呼ばれる、柔らかく温かみのある乳白色の素地があげられ、柿右衛門様式の美しい赤絵に最も調和する素地で、1670年代にその製法が完成したと言われている。
柿右衛門窯は江戸時代初頭に始まって以来、代々酒井田家当主がその名と共に継承し、現当主の十五代まで連綿と続いている。初代柿右衛門(1596~1666)が最も有名で、酒井田家に伝わる文書『赤絵初りの覚』には、1647年頃に初代柿右衛門が赤絵(色絵磁器)の焼成に成功したことが記されている。